学会長挨拶

日本バイオメカニクス学会会長
深代千之 (東京大学)

日本バイオメカニクス学会
第24回大会の開催に寄せて
 

 立命館大学において、2016年9月12〜14日、「未来のバイオメカニクスを解く」をテーマに、第24回学会大会が開催されます。最初に、学会大会を快く引き受けてくれた伊坂忠夫組織委員長、長野明紀実行委員長、栗原俊之事務局長をはじめとするスタッフの方々に、日本バイオメカニクス学会を代表して、厚く御礼もうしあげます。近年、立命館大学は、研究やスポーツ競技など様々な分野で、国内外において大きく躍進しており、その中核を担うスタッフによって、この大会が企画・運営されることに、大きな期待を寄せています。

 本大会のテーマ「未来の・・」を聞いたときに、次のようなことを思い浮かべました。近年の日本の様々な分野の発展を俯瞰してみると、日本史上、最大の変革であった明治維新においては、近代化された社会および欧米型の科学技術を満載した合理的生活を目指すという、つまり欧米に追い付き・追い越せという具体的な目標がありました。その発展の途中において、不幸な大戦も経験しましたが、現在、日本は欧米に追いつき、次の未来の目標を欧米とともに自ら考え出さなければならない立場にたったといえます。これをバイオメカニクス研究に置き換えると、日本バイオメカニクス学会:JSBの研究も欧米を目標にしていた時期を経て、今や国際スポーツバイオメカニクス学会:ISBSはもとより、国際バイオメカニクス学会:ISBをも凌ぐ勢いで発展してきているといえます。すなわち、これからのJSBバイオメカニクス研究は、欧米をもリードするような未来志向のアイデアそして立場が期待されているのです。この意味において、本大会のテーマは、まさに時勢に適合するものと考えられます。

 バイオメカニクス研究の発展を、大きな流れとしてみると、純粋科学としてはキネマティクスからキネティクスへ、つまり現象論から機序解明へと進んできました。また、これらの基礎研究を土台とした応用科学としての試みも、国立スポーツ科学センター:JISSで結実しつつあります。ただ、ここで注意したいのは、IT機器に支えられた測定や演算機器の発達と、バイオメカニクス研究自体の発展とを明確に分けて理解しなければならないということです。例えば、逆ダイナミクスの動作解析では、フィルムからビデオカメラ、そしてモーションキャプチャへと進化し、デジタイジングのような作業をしなくとも済むようになりました。一方の順ダイナミクスは特にIT機器の進化に支えられていて、1999年カルガリーISBで米・テキサス大学 の歩行シミュレーションで使用したコンピュータは数億円だったものが、現在ではパソコンでできるようになりました。すなわち、我々は測定技術や解析手法の発展ではなく、バイオメカニクス研究自体が発展しているかどうかを、もう一度よく考えなければならないということです。逆にいえば、現在では作業やハードウェアといった制限を超えて、基礎学力を土台としたアイデアで勝負できる時代になったともいえるのです。だからこそ、独自性をもつJSBの発展が期待されていると考えています。

 ところで、JSBには1000名以上の会員が在籍しており、JSBはもちろんISBやISBSの学会大会において、多くの優秀な研究が発表されています。これらの研究活動を考慮すると、「バイオメカニクス研究:JJBSE」への投稿がまだ十分ではないといえます。JSBは、若手研究者が主軸を担う学会であり、若手への研究助成も実施し 、大会では若手奨励賞も準備しています。JSBとして、さらなる若手研究者の発展と学会誌への投稿を期待しているからです。そのために、本大会での発表と積極的な議論を通じて、自分の研究をブラッシュアップしてもらいたいと念じています。

 最後になりますが、実行委員の先生方はもとより、協賛企業の方々、そして立命館大学に対して、感謝の意を表します。そして、参加者自らが学会を盛り上げるような活気ある大会になることを祈念し、会長挨拶とさせていただきます。